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Posted by チェスト at

2017年05月10日

あなたのために。



玄関先のさくらんぼ。
色付いて、鮮やかに。


4月末でお世話になった職場を
退職させてもらい、私の生活にも
色彩が巡り始めている。


退職が決まった同時期に
祖母の容態が終末に近づく。
絶食、絶飲が続いており
20数キロになった身体から
排出しきれない水が皮膚から
漏れている。


唇がかさついていて
湿らせたガーゼで
拭いてあげたら
「美味しい~ありがとう」
と言った。


認知症の症状が出てから
「ごはん、ごはん、めし、めし」
を念仏のように唱える祖母。


もう何も食べさせてあげられない。
だから、せめて。





辰巳芳子さんの命のスープ。





梅干しは、8年前に
私が初めて作った作品。


古ければ古いほど
身体に負担がないそう。
その話を聞いてから
小瓶にその年々の作品を
少しずつとっている。






水を汲みに。
口に含むと
優しく
さらっとしていた。





小麦色がベストなのに
きつね色に。。

米の花もうまく咲かせられなかった。





朝から作り始め
終ったのが面会時間ぎりぎり。





祖母に届ける。


病室に入ると
奇声を発していた祖母。


ガーゼに玄米スープを含ませ
顔を拭いてあげたら
一瞬で黙った。

「ありがとう、うれしい」
と祖母が言う。

ただ私は祖母の顔を
スープで拭いてあげる。


静かな時間が流れ
「すみませんね」と祖母。


「だって、ばぁちゃんいっぱい御飯作ってくれたよね。だから、いいんだよ。」と伝えたら


静かに首肯いて
「ありがとう、うれしい」
と言っていた。


私が嬉しかった。
上手に出来なかったけれど
魔法が効いたかもしれない。


伝わったかもしれない。






  

Posted by 風の実 at 06:51Comments(0)